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犀川・萌絵シリーズ・ベスト10
トリックの完成度、意外な犯人。奇術的手法により設計された森パズラー
が、ミステリという土台の上で頂点を究めた名品。 .
密室にこだわる著者でこそ可能にした、密室ファンを唸らせる密室の必然
性。密室の美学と、賛否両論の動機の美学とが、渾然とマッチした美品。
森ミステリの一つの転機点。パズラーらしからぬ展開であってさえも、.
やはりパズラーとして終結する。氏が新たな一面を開いた逸品。 .
森ミステリの稚気炸裂!小品ながら、純粋パズラーとしての凝縮された提
出。純度の高いスマートな推理と遊び感覚に溢れた佳品。 .
森作品中最高のパズルが、極めてスマートに洗練された解決を迎える。.
パズルの素晴らしさが、ミステリ部分を霞ませるのが惜しまれる良品。.
6. 全てがFになる
森ミステリのあらゆる要素がここにある!鮮烈な印象を残すデビュー作。
森ミステリを語る上で、避けて通ることの出来ない雄品。 .
古くからのネタに、全く新しい衣を着せて、森パズラーに塗り替える。.
新時代を画す不思議な殺人シーンも印象深い、独特の趣を持つ妙品。 .
8. 冷たい密室と博士たち
著者の持ち味が、決してけれん味にあるわけでなく、純粋パズラーである
ことを、2作目にして確固として印象づけてくれた好品。 .
美学に彩られた光景が、ミステリとしての進行の無粋さに興を削がれる。
狂人の論理に裏打ちもなく、著者としては珍しく美しさに欠けた凡品。.
10.笑わない数学者
あまりにも単純すぎるトリックと、その簡単なハウダニットが、即フーダ
ニットに直結する、負の連鎖を示してしまった駄品。 .
なお上記のベスト10は、あくまで純粋にミステリ部分のみを評価したも
のです。ポーズだったんかい?の犀川センセと、性格ワルが魅力よ!の萌絵
チャンが、どうしたこうしたって部分は、ひとかけらたりとも、評価の対象
には含めてません。 .
ちなみに3位〜6位は、その日の気分で変わりそうなほど僅差。後は固定
順位です。現在の評価なので、年間ベスト作成時と順位が入れ替わってるの
もあります。多分、人それぞれ、かなり趣味が分かれそうな作品群なので、
選ぶ人によって、全然違う順位になっちゃうでしょうね。実際、作者自身が
ベストだと考えているらしい「笑わない数学者」が、私の評価では最低にな
ってますから。でも、著者の意向と読者から見た作品とは、全く別のものだ
から、これでいいんです(開き直り(笑))。 .
しかし、上記のコメントだけでは、評価理由としては不足でしょうから、
完全ネタバレの全作品解説で補足を行っています。ネタバレですので、出来
れば全作品読了後に読んでくださいね。 .
さて、以上のように、ベスト10及び、ネタバレ解説で、犀川・萌絵シリ
ーズ、長編全10作のネタバレ・レビューを行ってみた。かなり厳しい評価
も書かせて貰ったが、これだけの良質の作品群を、これだけの短期間に産み
出したのは、まさに驚異的。しかもシリーズ物のほぼ常として、温めていた
アイデアを吐き出す初期作品の出來が良く、回を重ねる度に質的低下を示す
場合が多い中、これだけのテンションで、佳作を産み続けたのは、まさに脱
帽の極み。惰性ムードではなく、常に期待感を持って、次作を待つことの出
来たシリーズ物など、そうそうあるものじゃない。しかも、その次作を待つ
期間の短さと来たら、驚嘆に値する。シリーズとしては、大満足・大推薦!
新シリーズは、私としては期待はずれな出來で始まったが、まずは顔見せ
興行の一作目、この先どう転んでいくのかの楽しみは、逆に強くさせてくれ
る感もある。シリーズ外の「そして二人だけになった」も、驚愕!!!のト
リックを用意して、おそるべき離れ業を実現させて見せた大傑作。 .
本質的にパズラー作家でありながら、魅力ある小説として書きこなす実力
者の森氏。本格ファンから一般読者、キャラ萌えの方々まで、強く引きつけ
る力は抜群。小技から大技まで、純粋推理から叙述系の仕掛けまで、今度は
どんな手で来るのか、ミステリとしての尽きぬ愉しみを提供してくれる氏。
これからも森博嗣からは、決して目が離せないぞ!ブラボー、森博嗣!!