ホーム/創作/日記
96年度ベスト10及び総評
まずは、昨年度の私的ベスト10から。
1位 : 黄昏の獲物 愛川 晶 8点
2位 : 星降り山荘の殺人 倉知 淳 8点
3位 : 人格転移の殺人 西澤保彦 8点
4位 : いちばん初めにあった海 加納朋子 8点
5位 : 名探偵の掟 東野圭吾 7点
6位 : パワーオフ 井上夢人 7点
7位 : 蒲生邸事件 宮部みゆき 7点
8位 : フリークス 綾辻行人 7点
9位 : すべてがFになる 森 博嗣 7点
10位: コズミック 清涼院流水 7点
去年の特筆すべき状況と言えば、西澤保彦と森博嗣の二人の活躍
が挙げられるだろう。正当派パズラーの森と、変格パズラーの西.
澤、今後もこの二人は良質の作品を産んでくれるであろう、と云う
信頼感、安心感を感じることが出来る。 .
一方、良きにしろ悪きにしろ、注目すべき新人は清涼院流水と云
うことになるだろうか。個人的には「コズミック」は認めているの
だが、「ジョーカー」に関しては、最低の評価しか出来ない。3作
目はJDCを離れるそうだが、どういう作品になるだろうか? .
一度、正当な本格ものを書いて欲しいものだが。 .
以上、注目株3人の最新作(2/15現在)の書評はこちらから
どうぞ。森博嗣に関しては、全4作のネタバレ書評もあります。.
さて、ここでベスト10に戻ってみよう。去年はあまり8点以上
級の作品は少なかった。4作を8点にしてはいるが、例年だと7点
でもいいくらいの出来だったかも知れない。 .
第1位の「黄昏の獲物」は昨年唯一の、正面からの本格の佳作。
凄く綺麗に出来上がっているのに、「このミス」などでもほとんど
無視されているのは可哀想すぎる。対象時期の一番初めに出ている
のが不幸だったのでしょう。こういう貴重な作品こそ、もっと評価
されるような環境が欲しいものですね。 .
2位、3位は、もう改めて語る必要がないような作品。「星降.
り」には完全にやられてしまいました。「人格転移」は今のところ
西澤の代表作だと思います。 .
4位、6位、7位はミステリではないですね。個人的には加納朋
子は、今は北村薫、宮部みゆきを越えたと思う。この作品も本社へ
向かう会社の連絡バスの中で読んでしまったのですが、泣かされて
しまいました。周りの人には、ちょっと不気味だったかも。「蒲生
邸」は相変わらずの宮部節。ほんとに小説のうまい人だな。「パワ
ーオフ」はSF。もう本格は書いてくれないのだろうか。 .
5位「名探偵の掟」は、これまた昨年の話題作。東野圭吾のパロ
ディ精神と、本格へのオマージュに満ちた、愛すべき作品集。 .
「どちらかが彼女を殺した」の方が評価は高いかも知れませんが、
ミステリを読むときは意識して考えないようしている身としては、
ちょっときつい仕打ちでしたね。試みは好きなんだけど。 .
8位は、これが出るのなら、あのハードカバーは買わずに済んだ
のに〜という作品集。綾辻のホラー指向と本格性が割とうまくマッ
チした例。 .
9位、10位の森、清涼院に関しては、前記したので省略。 .
さて、今年はどんな作品との出逢いがあるのだろうか?