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インターネットで選ぶ全日本小説大賞98
投票用紙(国内版)
----- 全体について -----
総評:本格ミステリ的には、あまり奮わなかった年であった。一人気を吐い
たのが、麻耶雄嵩。麻耶らしき作品の復活が嬉しい限り。代表作にな
ってもいい作品を連発した森博嗣と、大作連発の山田正紀がこれに続
く。 .
----- 個別作品 その1 -----
タイトル1: メルカトルと美袋のための殺人
ジャンル1: ミステリ 作者名1: 麻耶雄嵩
点数1: +7
感想1:新本格随一の奇想の驍将、麻耶雄嵩。ねじれた奇想と皮肉に満ちた
第1短編集は、彼の持ち味が存分に発揮された、おそるべき完成度
を持った名短編集。 .
----- 個別作品 その2 -----
タイトル2: 鴉
ジャンル2: ミステリ 作者名2: 麻耶雄嵩
点数2: +6
感想2:これまた、まさしく天才の所業。本格と不条理の融合した、麻耶雄
嵩第3の奇想の傑作。麻耶ミステリのラストに待ち受けるのは、カ
タルシスではなく、カタストロフィなのだ! .
----- 個別作品 その3 -----
タイトル3: 詩的私的ジャック
ジャンル3: ミステリ 作者名3: 森博嗣
点数3: +6
感想3:個人的には森作品のベスト。密室自体が伏線となる、密室の必然性
の妙。動機も美しい。しかし、12章は不要だ。ラブ・ストーリー
連作として読み込むファン向けのサービス? .
----- 個別作品 その4 -----
タイトル4: ターン
ジャンル4: SF・ファンタジー・恋愛小説 作者名4: 北村薫
点数4: +6
感想4:「たんぽぽ娘」「愛の手紙」等の名作SFに連なる、時間もののラ
ブ・ファンタジー。柿崎の部分が現実の生々しさを描いて、興ざめ
な点を除けば、ファンタジーとして評価できる。 .
----- 個別作品 その5 -----
タイトル5: 幻惑の死と使徒
ジャンル5: ミステリ 作者名5: 森博嗣
点数5: +6
感想5:個人的には森第2位の作品。トリックとしては、森作品中最高だろ
う。彼のトリックが、極めて奇術的であることに、改めて気付かさ
れた作品。 .
----- 個別作品 その6 -----
タイトル6: 封印再度
ジャンル6: ミステリ 作者名6: 森博嗣
点数6: +5
感想6:「事件」「犀川と萌絵」「壺と匣」の三つのストーリーから構成さ
れるが、白眉は最後の「壺と匣」の謎。これだけ綺麗に爽快に解け
るとは思わなかった。見事なパズル。 .
----- 個別作品 その7 -----
タイトル7: 妖鳥(ハルピュイア)
ジャンル7: ミステリ 作者名7: 山田正紀
点数7: +5
感想7:「閉じこめられた女」「女は天使か悪魔か?」二つの流れに、雑多
な内容の盛り込み。焦点は定まらないが、サスペンスに、散漫では
あるが豊富な風変わりな殺人は、面白い。 .
----- 個別作品 その8 -----
タイトル8: 朝刊暮死
ジャンル8: ミステリ 作者名8: 結城恭介
点数8: +5
感想8:自画自賛な作品に滅多に満足作はないのだが、これは意外な掘り出
し物。ご都合主義、安直な設定等、作りは安っぽいが、活字の世界
が現実になっていく展開、トリックは上出来。 .
----- 個別作品 その9 -----
タイトル9: 嗤う伊右衛門
ジャンル9: 時代小説・恋愛小説・純文学 作者名9: 京極夏彦
点数9: +5
感想9:現代の語り部たる京極が丹念に紡ぎ出した物語、実に哀しく切なく
美しい。次は是非とも、京極版「耳なしほういち」を書いて欲しい
なぁ。 .
----- 個別作品 その10 -----
タイトル10: 地底獣国の殺人
ジャンル10: ミステリ・冒険小説・SF 作者名10: 芦辺拓
点数10: +5
感想10:とんでも本と、秘境冒険SFと、戦争スパイものと、本格ミステ
リのごった混ぜ。それぞれとしては、若干中途半端だが、破天荒
な企てにしては、うまくまとめたと言える。 .
----- 部門賞 -----
部門名: カムバック賞
部門作品名: スラム・ダンク・マーダー その他
部門評:クイーン流のロジック重視の智の愉しみに満ちた作品を、これか
らも期待しています。 .
----- その他 -----
企画の感想:ミステリという言葉が、あまりにも多様な作品を許容する現
在の状況において、ミステリー大賞→小説大賞という拡大の
方向性も確かに一つ。しかし、本格ミステリファンとして.
は、狭義の本格ミステリのみを対象とした、何らかのベスト
企画を切望する。 .