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お薦めミステリ映画ベストテン

長いコメントはいらない、ランキングだけという人はこちらへ。

第1位:デストラップ

 原作が、あの超絶傑作「死の接吻」(全てのミステリファンはこ
れを読まずして、死ぬことなかれ!)を書いたアイラ・レヴィンだ
けあって、最高に知的なスリラーに仕上がっている。まさに彼らし
いと言っていいような中盤に持ってきたアレ、そしてそこから終盤
へ到るまでのどんでん返しにつぐどんでん返し。登場人物の駆け引
きが、実に細かいところまでミステリなのである。最後の最後ま
で、「ミステリとしての企み」を堪能できる傑作。      
 映画技術はともかく、スリラー映画としては、ヒッチコックの諸
作をも抑えて、ベスト1としたい。             


第2位:探偵〜スルース〜

 これまた全編どんでんの連続。これだけやってくれると文句付け
たらバチあたるというくらい、とことんまでも徹底的に作り込まれ
ている。「デストラップ」もそうなのだが、これも芝居の映画化。
脚本としての狙いが絞り込みやすい為か、映画として用意されたも
のに比較し、切れ味の鋭い作品が多いような気がする。特にミステ
リ作品においては、「騙し」に集約されているので、人間ドラマを
味わおうなんて変な欲気を出さなければ、作りもんの世界で楽しめ
ること請け合い。この作者が書いた戦後最高の(?)密室ミステ
リ、「衣装戸棚の女」(書評はこちら)も、是非ご一読をどうぞ。


第3位:サイコ

 今更とは思うものの、ミステリ映画を語る場合にヒッチコックが
抜けていたら、片手落ちになってしまう感じがするのは私だけでは
ないはず。で、やはり1作となると、個人的にはこの作品が落とせ
ない。これさえなければ、知名度はそれほど高くはないが、面白さ
としてはずば抜けている「バルカン特急」や「三十九夜」を挙げら
れるんだけど、とは思うものの、、、            
 見逃している人はそう多くはないだろうこの作品を、「お薦め」
としてしまうのもなんですが、もし、そんな勿体ない人生を送って
いる人がいるのなら、と危惧しこれを第3位にしておきましょう。


第4位:十二人の怒れる男

 このドラマとしての完成度は「凄い」の一言に尽きる。舞台はた
った一つの部屋。登場人物はわずか12人。「少年は有罪か無罪
か」語られるテーマは、ただその一つ。それなのに全編にみなぎる
緊張感は最後まで持続し、飽きさせることはない。そんな脚本もさ
ることながら、とても第1作とは思えないシドニー・ルメットの力
強い演出。ミステリは主ではないのだけれど(しかし、もちろんミ
ステリとして充分成立し得る展開を示すのは事実だ)、ミステリが
題材の一部に取り込まれている映画としては、疑いようもなく最良
の部類の作品である。このベストテンの中で唯一、ミステリを楽し
みながらも、思いきり人間ドラマに浸れる名作中の名作です。 


第5位:12人の優しい日本人

 「十二人の怒れる男」が出たら、やっぱりお次はこれ。でも、
「パロディか。所詮本家本元にはかなわないはず」なんて食わず嫌
いをしないように。これは奇跡的なほど良く出来た邦画ミステリコ
メディです。しかもそのミステリの部分に関しては、本家よりも更
にまともにミステリをしている、手がかりの意味が見事に解きあか
されるカタルシスをも感じさせてくれるのである。それも、全編思
いっきり笑わせてくれているのに、というのだから、この映画の面
白さはハンパじゃない。それもそのはず。この脚本はあの「古畑任
三郎」の三谷幸喜。彼のユーモアセンス、ミステリセンスの集大
成。まさに、日本国民みんなで楽しめる大傑作!       


第6位:殺しのリハーサル

 このどんでん返しもお見事!たしかコロンボを製作したコンビが
作ったTV映画です。ビデオは出ていないかも。       
 新しい芝居のリハーサルにと、集められた俳優達。しかし、それ
は昔の殺人の犯人を見つけだすことが目的であった。     
 ミステリとしての究極の快感は、「騙し」にあると再確認してみ
たい人には、ひょっとしたら、1位2位の「デストラップ」「スル
ース」よりも、お薦めかもしれない。多チャンネル化が急激に進む
昨今、いつかどこかのチャンネルで見かけたときは、お見逃しな
く。                           


第7位:サスペリア2

 映画館で見ないとホントの怖さは伝わらないけど、今まで見た映
画の中で一番怖かった。しかも、こいつはミステリだ!(「サスペ
リア」は違うので、混同されませぬよう)          
 さて、見終わった人は、最初の方のシーンに本当にあれが写って
いたのか?というところが気になると思います。しかし、残念なが
ら、その寸前でカメラは切り替えられて、あれは映っていないとい
うのが真相です。堂々と出しておいても、気付く人は少ないだろう
とは思うのだけれど。そうすれば、叙述トリックの多くが本という
メディアでしか成立しないものが多いのに対し、映像ゆえのトリッ
クになってたんですけどね。惜しいな、ダリオ・アルジェント。

(後日談)
 これを読んだ方からメールを頂きました。私が上記を確認したの
はLD版だったのですが「DVD版ではきちんと映っていますよ」
とのことでした。ダリオ・アルジェント、ちゃんと仕事してました
ね。失礼しました。あなたのミステリ・センスは正しい!!! 

 LD版の編集者が大タコだったみたいです。何しろジャケットの
裏にたっぷりと犯人の画像を入れ込んでるし。ミステリなど読んだ
こともないような人だったのでしょう。しかし、よりによって一番
大事なポイントを切るなんて、凄い逆センスの持ち主ですね。 


第8位:マジック

 内向的な性格のマジシャン、腹話術を取り入れることにより、成
功していく、しかし、やがて彼の精神は歪み、、、というサイコも
のであるが、同時に悲しいラブ・ストーリーでもある。    
 この作品の中で最高のシーンは、彼が女性を口説くときのとある
方法である。これが実に心憎い。素直な私は真剣に見入ってしまっ
た。演出の見事さに舌を巻いたものだ。           
 サイコがテーマの作品としては、他に「W〜ダブル〜」もお薦め
である。ミステリ作家が脚本を書いた、”家族”を求めるサイコな
男の物語。                        


第9位:太陽を盗んだ男

 お薦め「ミステリ」映画ということなので、あまり上位にするこ
とは出来なかったが、本来の映画としての面白さだと、この作品に
軍配が上がる。長谷川和彦という希有の才能が産み出した、現代劇
の日本映画としては、最高のアクション映画である。(現代劇の、
と断り書きを入れたのは、言うまでもなく、黒沢という存在がある
からだ)原爆を手に入れた男(沢田研二)とそれを追う刑事(菅原
文太)の息詰まる攻防戦。平凡な終着に向かう方向へは物語は流れ
ない。長谷川和彦のATGでの功績は大きいのだろうが、彼自身の
作品をやはりもっと見たかったものである。邦画を変える力を持っ
た男だったのに。                     


第10位:テラートレイン

 貸切り列車の中の卒業パーティーを襲う連続殺人。過去の怨念の
中から現れた犯人の正体は?                
 そう、B級ホラー界からも、1作選んでみました。ジェイソンだ
けで話が持つようになる前の「13日の金曜日」などのように、意
外な犯人を主眼とした一連の連続惨殺殺人ホラー作品の中でも、特
に出色だと思われる作品です。               
 マジック界の貴公子?デビッド・カッパーフィールドが、そのま
んまマジシャン役で出ていて、しかも殺されたりするのも、ちょっ
とご愛敬です。ビデオは出ていますが、置いてあるレンタル屋さん
は少ないかもしれませんね。                

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