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「夏期限定トロピカルパフェ事件」疑問点
米澤穂信「夏期限定トロピカルパフェ事件」の
完全ネタバレです。必ず、読了後にお読み下さい!
「夏期限定トロピカルパフェ事件」の謎解きについて、一つだけ疑問点があ
るのでここに書いておこう。図書館で借りたため今更読み返せず、私が何か
勘違いしている可能性も高い。これは私の思い違いだろうとか、こう解釈す
ればいいのでは、等のご意見があればメールを頂ければ幸いです。 .
その疑問点とは、 .
「小佐内さんにはメールが出せる保証があったのか?」 .
という点である。.
このメールが、すなわち「スタート」の合図となるわけである。これがな
ければ、そもそも何事も始めることが出来ない。死活を握る鍵である。 .
しかし、拉致された状況下でメールが打てる余地があることを、小佐内さ
んが確実に期待出来たとは思えないのだ。拉致する側として助けを呼べる手
段を容易に作らせるとは思えない。誘拐は小佐内さんの演出だから、本人達
はそこまで大変なこととは認識していなかったのは間違いないだろうが、平
気でメールを打たせてあげるという状況でもないだろう。 .
文面は最初から用意できていたわけだから、送信ボタンが押せれば十分と
いう状況ではあるだろうが、いきなり携帯を取り上げられたりするなども考
えられるはず。確実な「保証」が確保できていたとは思えないのだ。 .
拉致される時間までは知ることが出来なかったろうから、事前に出すこと
も出来ず、その場合でも時間的な矛盾が生じる可能性もある。 .
では、確実な「保証」は無理なのかというと、別にそうでもない。手はあ
るのだ。つまり、 .
「携帯も渡しておけばいい」 .
これで安全は保証されていたはずである。共犯者とは同じ携帯を所持して
いて、あらかじめ交換していたとすることも可能だろう。共犯者に誘拐の電
話だけでなく、このメールも打たせればすむだけなのだ。 .
また、ミステリの作者としての立場からすれば、拉致されたときに「自分
自身の携帯を所持していなかった」という条件から、最後の謎解きに於ける
別の効果的な伏線も、幾つか作れた余地もあったはずだ。 .
さて、この疑問点、果たしてどうなのだろうか? .