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『「Y」の悲劇』ネタバレ書評

アンソロジー『「Y」の悲劇』の全作品完全ネタバレです。注意!

 
有栖川有栖「あるYの悲劇」                   

 どうってことのない作品。ミステリ的な趣向としては、「おかしな身振り
を繰り返した」けど通じなかった、というとこぐらいが、少し面白味を感じ
た部分。「やまもと」ってのは”知識”に過ぎないし、たかだか矢印がYに
までなっちゃうのは苦しいと思うし。(死にかけてるっつうても、あんまり
不器用すぎやせんか?)こういう無理矢理感も、ダイイング・メッセージ嫌
いな理由の一つ。もっと理由はたっぷりあるけれどさ。        
 

・篠田真由実「ダイイングメッセージ<Y>」            

”物語”でした。本格偏愛派の私としては、語る部分が無い作品。蒼くんの
番外編ストーリーみたいだけど、篠田作品読んでない私にはわかりません。
真相になってる染色体という意味合いが、Yから安直に思い浮かぶ例として
二階堂黎人が挙げていたのが、後から笑えた部分(おいおい、やっちゃって
るってばよぉ(笑))                       
 

二階堂黎人「『Y』の悲劇−『Y』が増える」           

 死の真相自体は、結構好きかも。最初からずっと全部が伏線になっとるや
ろうが、と言われたら、、うっく、そうやね、、って認めるしかないし。ギ
ャグな目くらましで、うまいとこ持っていったと思う。でも、メッセージ周
りは納得いかないや。あれを”犯人”とは言わないと思う。      

 ただ、これについては一つ仮説がある。藤原宰太郎のトリック本だったか
なで、今まで書かれていない犯人の例が挙げられているのがあって、本当の
意味での”読者が犯人”ってのもその一つだと思うんだけど、”出版者が犯
人”という項目が書かれていた。これが実は私も、ずぅ〜っと引きずってい
たりする。二階堂黎人もちょっと軽い扱いではあるけれど、これやりたかっ
たのかなぁ、とも思うんだけど、どうでしょうか?          
 

法月綸太郎「イコールYの悲劇」                 

 間違いなく、本書では最良の一編。たしかに全体としてうまくまとまって
いるし、ボールペンの推理などは、『誰彼』の頃のゴリゴリでしつこくて、
細か過ぎやせんかってくらいのロジック展開を、彷彿とさせてくれた。最後
の一つ前の”¥”を、最初から予想していて、これが真相だったら激怒して
やろうと構えていたんだが(笑)、ちゃんとその後にひっくり返しがあって
良かった。でも、やっぱり、ダイイングメッセージ物の最大の弱点である、
そんなややこしいメッセージ残すかぁ?!という思いは充分に残ってしまう
作品。そりゃあ普通の状態なら、あらこれはこうするとこうなるわ、おもし
ろ〜〜い、などと思い付いて喜ぶとは思うけどさぁ。さすがに死ぬ直前に思
い付いたんじゃなくて、最初に伝言書いたときに思い付いたことを、最後に
残したってことなんだろうけど、それでもやっぱり私としちゃ、「みどり」
だけを丸で囲むってのが、人間心理として適切なように思うんだけどね。

 
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