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「私が彼を殺した」ネタバレ推理

 
 101pにおいて、駿河は預かったピルケースを一端ポケットに入れてい
る。この仕草がなんとなく怪しく感じていたのだが、やはりこの瞬間にピル
ケース自体を入れ替えた、というのが主流の推理のようだ。      

 39pに、このピルケースが前妻とペアで買ったものだと云うことが記さ
れている。そして122pに、穂高の前の結婚生活を暗示させる品々が、駿
河の部屋に運び込まれていること、その中には、前妻から穂高宛に宅配便で
送られてきたものもあると書かれている。              

 従って、このピルケースを駿河が持っていたこと、ピルケース自体を入れ
替えることが出来たことは、充分に推測することが出来る。以上の二つの伏
線の張り方、謎の指紋の主として、さりげなく扱われていた穂高の前妻が現
れてくるあたり、これはミステリとして意識して成立されているものとしか
思えない。                            

 しかも本書の性質として、あまり凝りすぎた解決は許されないだろう。解
決編を公募するような趣向であれば、「騙し」を主体とした引っかけを用意
しておくことも出来るであろうが、一応丹念に読み取れば、多くの読者が辿
り着けるであろう解決を用意しておくべき趣向の本書としては、これをレッ
ドへリングとするのは、あまりにも凝りすぎの世界なのだ。      

 従って、上記こそが作者が用意した真相であることは、間違いないと私は
思っている。しかしこの推理に対する反論もネット上によく上がっていて、
それも非常に納得のいく内容なのだ。                

 いわく、駿河がピルケースを預かった瞬間に入れ替えたのなら、それ以前
の雪笹香織、西口絵里の指紋は当然残っていない。こんな基本的な矛盾を警
察が見逃すはずがないので、もっと早く動きを見せているはず、といったも
のである。確かにこのことは非常に大きな傷となってしまう。東野圭吾も編
集も見落としたのか、それとも本当に別の解決があるのだろうか?   

 いずれにしろ、すっきりとした読後感を感じることが出来ない。「どちら
かが」の文庫化の際には、解決が付けられる(どういう形式でかは不明)と
いう噂があるので、本書の解決も文庫化を待つしかないのであろうか? 

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