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「雲上都市の大冒険」ネタバレ書評

山口芳宏「雲上都市の大冒険」の完全ネタバレです。
必ず、読了後にお読み下さい!

 
 では、この作品の”無茶”だったり、”無理”だったり、”無理矢理”だ
ったりと思えるところを、ここに書いておこうと思う。        

 まずは、私がネットで見かけたところでは、二つの点が挙げられていた。

 一つは勿論メイン・トリック。まぁ、これはしょうがないよね。本人だっ
て充分に自覚しきっての確信犯だろうから、これは改めて取り上げるような
ものでもあるまい。私も科学的な視点で語れるほどの知識はないし。  

 もう一つ、ユニークな視点は、膝を悪くしていたという設定について。こ
んな設定なのに、あんな行為(赤面!)が出来たのかって指摘ね。うふふ、
こういう状態で、どういう体位にならざるを得ないかという、深い(苦笑)
考察まで立ち入っての、鋭い指摘と言わざるを得ないだろう。     

 
 ってところで、ここからは私自身が感じたところなんだけど、やはりまず
は真っ当に考えれば(バカミスに対して真っ当に考えるのが正しいかどうか
ってのは、この際おいといて)、「復讐のために脱獄しないってのは、どう
考えてもあり得ないだろ」ってところだ。              

 20年間生き延びられる保証なんて全く無いわけだし、自分が育てられる
わけでもない子供に復讐を託すなんてのは、やっぱりあり得ない。   

 これやりたかったんなら、逃げられなかったんだから最後の策で、という
設定にすべきで、いつでも逃げられる環境にあったという設定が、そもそも
おかしいんじゃないかなぁ。看守と共犯じゃね。設定が矛盾してる。  

 で、これに関連してもう一点。「令子が看守に選ばれている理由がとても
理解できない」。あまりにもご都合主義。同じ村の出身だってことが、せめ
て雲上都市の人間には知りようもなかったという、理由付けは必要だろう。
でもって、そこまでやった挙げ句に恩田との恋ってのも不自然だと思うんだ
けどなぁ。看守を続けるための苦肉の策?              

 
 でもって、本書一番の無理矢理というか、意図的な見落としというか、最
大の不自然なポイントを一つ。                   

「口を割らない男を監禁し続けるよりも、宝探しをもっと大々的にやってい
るはず」。そう、やってることがちぐはぐだろ。監禁が一番じゃなくって、
宝を見つけたいってのが一番なわけだから、大々的ってのはあれとしても、
とにかく宝探しまくってるだろうに。そしたら、最初あっさりと見つかった
宝が、これだけの時間かけて見つからなかったはずはないだろうに。  

 ね、まずはそこからやろうよ。ってか、リアルならやってるってば! 

 
 ついでにオマケ。せめて頭だけでも出る穴だったら、と考えてしまったネ
タが一つ。                            

 座吾朗は夜な夜な、身体中の骨を少しづつ、ボキっと折っていたのだ。夜
中のうめき声の正体はソレだった。骨を折って、頭のサイズ以下の身体にし
て、脱出するために。さすがに頭蓋骨だけはどうしようもないけど。  

 さすがにこれは無茶苦茶度無限大のとんでも発想だけどね。こんなん実際
に書かれたら、当然怒るっちゅうねん。だけど、おぞましさだけはなかなか
のもんでしょ。そういう価値観が意味あるかどうかは別としてね。   

 
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