ホーム創作日記

「追想五断章」ネタバレ書評

米澤穂信「追想五断章」の完全ネタバレです。
必ず、読了後にお読み下さい!

 
  わざわざ最後の一行だけを隠してあるのだから、きっとこれで何らかの趣
向を考えてるのだろうというのは、最初から当たりを付けていた。   

 最初はこの五行だけを抜き出して並び替えれば、意味のある文章になるの
では、と考えていた。でも、それだとちょっと単純すぎる。      

「ああっ!」と思えたのは、たしか三番目の短編の結末が見つかったとき。
最後の一行をスライドして別の作品に付けても意味が通じる! それだけじ
ゃない。意味が通じるどころか、リドル・ストーリーの二択の選択が全く逆
の方にすり替わっちゃうじゃないか!                

 

 これは興奮したなぁ〜。そうか、そういう趣向だったんだと。    

 
 つまり、こういうことになる。                  

「五つのリドル・ストーリーはそれぞれ二択が用意されている。その二択を
つなぎ合わせて考えると、ある事件の真相が浮かび上がる」      

 これが表向きの構造。ここまでが作者(米澤ではなく作中人物ね)が読み
取られても構わない、いや、むしろ読み取って欲しかった部分。    

 
 でも、本当はその先がある。                   

「五つのリドル・ストーリーの結末をスライドさせて別の作品に付けると、
二択が全て逆の方向を指す。それをつなぎ合わせて考えると、事件の裏に隠
されていた本当の真相が浮かび上がる」               

 これはでも、作者としては絶対に知られてはいけない真相。だけど、誰に
も読み取られることはない自信があった上での告白だった。      

 
 五つのリドル・ストーリーの二択の選択が最後の一行で決定される。でも
その一行をスライドさせて付け替えると、全てのリドル・ストーリーの二択
の選択が完全に反転する。                     

 しかもそれが一つの事件の真相と、その裏に静かに隠されていた真実の真
相とを暗示する。                         

 大傑作にもなり得るような超絶技巧の趣向じゃないか!       

 
 というわけで、本当にこんな趣向を完成させて欲しかったッス!   

 

「追想五断章」感想に戻る...
 

幻影の書庫へ戻る... 

  

  

inserted by FC2 system