ホーム/創作/日記
ミステリ・パズル
[ ミステリ・パズル 有栖山有栖の冒険その1
]
ある夜、路上にて一人の男Aが刺殺体で発見された。Aは恐喝を生活の糧
にしていた男で、その日もその現場で、複数の人間から金銭を受け取ってい
たのだ。そのうちの一人がAを殺したことは、疑いようがなかった。また、
ナイフの柄が蓋になって、犯人が返り血を浴びたであろう形跡もなかった。
初動捜査を得意とする髭田警部(名前の通り髭もじゃの強面)は、発見後
1時間もたっていないのに、現場近辺にいたと思われる女性を4人も見つけ
だした。勿論、彼女たちは皆、Aの脅迫を受けていたのである。 .
以下が、その4人の証言である。 .
女B「私が通報した者です。彼の死体を見たときは、もう怖くて怖くて、足
が震えました。彼を見つけた時間ですか?9時5分過ぎくらいです。通報
はその先の角を曲がったところの公衆電話から。えっ、Eさんも近くにい
たんですか?彼女は親友なので良く知ってますが、人殺しなど出来るはず
がないです」 .
女C「私がAと会ったときには、彼はぴんぴんしてました。しばらく話をし
てから、9時になる少し前頃、そこを離れました。そう言えば私が角を曲
がって少ししてから、誰かを呼びとめるAさんの声が聞こえたわ」 .
女D「あんな奴、殺されて当然よ。会った時間?時計なんかしないから、わ
かんないわね。きっと9時前後よ。最初あたしに気づきもしなかったから
金を投げつけてやったのよ。結局、あいつは一言も口をきかなかった。B
かCかE?Bって奴は知らない。他の二人も見なかったよ。Eったら虫も
殺さないような顔してやるときゃやるんだから。Eが殺したとまでは言わ
ないけど、あたしでもCでもないさ」 .
女E「私が見たときには、Aさんは既に死んでいました。時間ですか?覚え
ていません。もう無我夢中で。怖くて怖くて。どう走ったのかさえさっぱ
り。あっ、でも、そう言えば、あそこに着いたときに、角を曲がる女性の
後ろ姿を見ました。いえ、暗くて誰かまでは、よくわかりません」 .
「まだ、犯行後それほど時間はたってません。犯人もそれほど遠くへは逃げ
られないはず。この中に犯人がいる可能性は高いのではないでしょうか?」
キムタク似の美青年、美月刑事の言葉に、名探偵有栖山有栖が答えた。.
「たしかに、この4人の中に犯人がいます。そして、犯人だけがたった一つ
だけ、嘘あるいは間違ったことを言っているのです」 .
さて、犯人はどの女だろうか?そして、犯人だけが言った、たった一つの
嘘(間違ったこと)とは何だろうか? .