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「追い追い」の矛盾

氷川透『追いし者追われし者』のネタバレです。注意!
『密室は眠れないパズル』の致命的ネタバレも含みます。
未読の方、注意!

 
 さて、本作で素晴らしい推理力を披露している人物だが、氷川作品を読ん
できた読者なら当然お馴染みの人物だろう。小宮山徹志。そう、「密室は眠
れないパズル」
の犯人である。東都出版に勤めていたことや、氷川を見いだ
したのは自分だという科白も、それで筋が通っている。        

 しかしながら「密室は」の時点で32歳。今回は37歳。冷酷な計画殺人
者である小宮山が、どんな有能な弁護士を雇ったにしても、わずか5年で娑
婆に出てきていられるとは思えない。あんな動機で、それほどの情状酌量の
余地を得られるとは思えないし。氷川シリーズとのリンクだとしたら、この
点は普通に考えれば矛盾だとしか思えない。             

 が、やはり氷川透のこと、確信犯では無しにこういう趣向を仕掛けてくる
とは思えない。年齢の件を始めとして、ぼかさずにディテールまで書き込ん
でいるからには、明確な意図を持っているのはまず間違いない。完全に別個
の作品だから、キャラクタだけ借りてみただけってことはないはずだ。 

 おそらく氷川シリーズにおいて、小宮山の再登場が行われるのだろう。し
かもあの事件のわずか5年後に塀の外にいる存在として。単純に上手いこと
やってのけて、本当に5年で出られたんですってのは、まず読者を納得させ
られるとは思えない。最も高い可能性としては”脱獄”なのではないか。前
半の山場として、脱獄ミステリを描くことが出来る。極端に頭のいい人部設
定が行われていることが、それを可能にさせる。           

 そして後半は、智脳的脱獄犯小宮山対氷川透。氷川と共に活躍するのは、
当然”氷川好き好き探偵団”(「人魚とミノタウロス」感想参照のこと)
おいおい、なんだか霧舎に続いて、またもや金田一少年路線か?    

 
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