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「インシテミル」ネタバレ書評

米澤穂信「インシテミル」の完全ネタバレです。
必ず、読了後にお読み下さい!

 
 最初に不満点を二つ。「都合の良い事件」と、「主催者」の話。   .

 まずは「都合の良い事件」から。やはり岩井の殺人が、完全な偶発事件で
あるところが、本作としてはちょっと苦しさが感じられる。      

 殺人者としてあらかじめ用意されていた関水が発動するより前に、この殺
人(偶発的事故)が起きてしまうのは、やっぱ作者側として、都合が良すぎ
るよなぁと。ここはせめて、岩井が真木を疑うのが当然という、もっと明ら
かな理由付けをしておいて欲しかった。               

 

 続いては「主催者」の話。主催者のことが一切描かれないのは、もうすっ
かり慣れてるんでいいとしても、「観客がどうエンタテインメントされてい
るのか?」が、やっぱりさっぱり理解できない。           

 ゲームを進行させるための必然性との相殺になってしまうが、”殺人者”
の役までがあらかじめ用意されているのも、興を削がれる気もする。主催者
以外の観客には伏せられてるとしてもね。              

 まぁ、スナッフ・ビデオのようなパッケージではなく、リアルタイムでの
鑑賞が主体だとすれば、元々犯人なんか隠しようもないだろうけど。それと
もひょっとして、絶妙のカメラワークで切り替えか?         

 しかも本作の場合、「どうペイさせるんだよ」ってのも、無茶苦茶大きな
疑問。「投資資金の募集」という目的が明確に書かれているから、単なる道
楽という逃げも打てない。巨額の報酬ってのが、真相の最重要案件でもある
わけだし、過去の類似作品と比較しても費用は桁違い。これをペイさせるの
って、「どんだけぇ〜」って言いたくなるんだけどな。        

 この点では、「カイジ」などのようなギャンブル・ゲームの方が、胴元が
儲かる仕組みが完璧に組み込まれているだけに、明解爽快なんだけどなぁ。

 

 ってなところで、最後に疑問点を一つ。              

 結局、西野の凶器ってのは疑心暗鬼にさせる目的で、用意されてなかった
のかな? 取りあえずそれはそれでも構わないんだけど、ホントの疑問点は
コチラ。自殺用に用意されていたのが、毒薬(赤い丸薬)ってのは、それは
ちょっとないんじゃないの?                    

 主催者側が意図したとおりに死体が発見されていたとしたら、これだと真
っ先に諏和名さんが疑われてしまうよね。彼女は”傍観者”という役割が与
えられていたはずだから、極力事件とは無関係になるような設定になってい
るはずなのでは? これに関しては自分としては納得できなかった。  

 えっと、これに関しては、どうなんだろ? 何か意図を見落としてる?

 
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