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「幻惑の死と使途」疑問
当然ながら、「幻惑の死と使途」の完全ネタバレです

 本物の有里匠幻(原沼利裕)と、人形の有里匠幻(佐治義久)と
は、一体どれほど似ているのか?どれほど似ていないのか?この設
定に若干の矛盾点を感じる。私がすっきり感激出来なかった理由の
一つに、おそらくこれも含まれているのだと思う。      

 あまり似すぎていてはいけないと思う。舞台用の化粧をしたら、
確かに似ているんだが、普段はあまりそうは感じられない。こうい
った設定が妥当な線だと思う。二人が似るように、舞台化粧を考案
しているのだから、という正当な理由も付けられる。     

 事実、トリックとしては、これで成立している。普段があまり似
すぎているのならば、いくらなんでもあんな不可解な消失劇が行わ
れたら、そこに疑問点が必ず出るべきであろう。髭などでごまかし
ていたにしても、誰も気にもかけないというのは納得がいかないは
ずだから。                        

 しかしである。そうすると冒頭の部分に矛盾を感じる。公園で独
白しているのは、本物の有里匠幻のはずである。その内容的に。そ
して、これに呼応して、後半で箱屋の死体発見につながる、加部谷
恵美の証言が出てくるのだが、少女はそれが有里匠幻だとはっきり
と気付いている。それほど似ているというわけだ。      

 片方では「間違うほど似ているわけではない」という設定になっ
ているのに、片方では「間違うほど似ている」という設定が出てく
る、どうも私にはそう感じられるのだ。プロローグと言うべき部分
に描かれているだけに、なおさら気になってしまった。    

 一つの疑問点として、すっきりしないものが残っている。  

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