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「Q.E.D.25巻」ネタバレ感想
加藤元浩「Q.E.D.25巻」収録作「パラレル」の
完全ネタバレです。必ず、読了後にお読み下さい!
三つの点について、語っておきたい。 .
「動機」と「機会」と「トリック」だ。 .
まずは動機。これが今回の一番の読み所だったと思う。Q.E.D.シリ
ーズの一番の得意技だと思う、論理パズル系の解き味である。 .
ロジック自体は面白いのだ。本当にただのパズルだったのなら、楽しめた
だろう。しかし、論理を成立させるための状況設定に失敗している。他の人
の手紙の内容を知らなかったのならまだしも、知ってたんだもの。名指しさ
れた人物を、犯人から除外することなど出来るはずがなかろう。 .
しかも、「推論」レベルとして行動の重み付けを行う程度ならまだしも、
「確信」として殺人行為にまで至らしめるのは、漫画の世界に於いても説得
力に欠けている。ロジックに溺れて、リアルを忘れ果ててはダメだ。 .
こういう数学的な論理性を持ち出すことが多いQ.E.D.ではあるが、
これは勇み足というか、あまりにも”行き過ぎ”てしまったようだ。 .
続いては機会。別々の人物が企んだ行為を同時に生じさせることで、一つ
の犯罪だと思わせるというのは、Q.E.D.でも何度か使われている手法
だと思う。しかし、機会に対して説明無き”偶然”で処理するのは、ミステ
リとしては許されざること。 .
居酒屋での同時相互毒殺は、このケアが完璧に欠けている。その時しか互
いに毒を盛り込むことが出来ないというような、多少なりとも説得力のある
限定条件を構築すべきだろう。漫画にそこまで厳密さを要求しなくても、と
いう点はあるかと思うが、そのほんの一匙が欲しいわけで、またそこまで望
んでしまうくらい、本シリーズへの期待感があるとも言えるのだろう。 .
最後にメイントリックだが、そもそも背後から銃に撃たれて、後ろに倒れ
るのか(相当な運動エネルギーが前向きに加わるのだろうから)が問題なの
であって、仰向けだろうがうつぶせだろうが、どうでもいいのだ。 .
ねえ。そうじゃない? 表裏を入れ替えただけで、ほらこれで向きがひっ
くり返りました、一丁上がりってわけじゃないとないと思うんだがなぁ。背
後に倒れる様を一コマで表現されても、ちょっと待て、そこが肝心なのに、
と思ってしまったのだが。う〜ん、気にかかるポイント間違ってる? .
以上、まあトリックは置いといても、動機と機会に関しては、まだやりよ
うがあったろうと思えるだけに、今回は不満足な出来だったな。 .