ホーム創作日記

98年讀書録(6月)

6/1 探偵宣言 芦辺拓 講談社ノベルス
  
 私は、芦辺拓に関しては、良い意味でも悪い意味でも「技巧派」という印
象を抱いている。デビュー作から今日に至っても、この印象は揺るいでいな
い。良い意味としては、明快だろう。いかに読者を騙すか、という点にかな
り重点を置かれることの多い本格ミステリの世界では、「技巧派」であるこ
とは、プラス要素としては、非常に重要なものだろうから。作風としては、
かなりトリッキーなものを得意とする作者だけに、余計に技巧の巧さが引き
立っている。一方、悪い意味としては、過剰に技巧に走り過ぎるが故に、解
決がくどくなり、すっきりとした驚きの演出に欠けるような点である。また
あくまで私の印象であるが、技巧がいささか智に走りすぎ、嫌みさすら感じ
られてしまうことも挙げられる。それだけに残念ながら、読後感もあまり良
くない作品が見受けられる。本格ミステリを志向しているという点では、現
代の作家の中でもピカイチの部類に入る人だと思うのだが、好きな作家に挙
げるまでに行かないのは、その辺が理由なのだろうと思う。      

 さて、今回の作品集も、その技巧は十分に発揮されている。全く関連なく
書かれた(探偵は同一人物で、時系列としては一本化されているものの)短
編集を連作の形として、一本にまとめあげるというのは、一般の作家には荷
の重い仕事だろうし、最初からそういう志向を持ちはしないだろう。「殺人
喜劇の森江春策」一編を取り上げるならば、出来のいい作品では全くないの
だが、こういう趣向を曲がりなりにも実現させた技術は、やはり買ってやる
べきものだろうと思う。                      

 短編集としてはいかにも本格な作品ばかりではあるし、それぞれのトリッ
クも技巧派らしく凝ってはいるのだが、上述したようにすっきりと感心出来
るような作品にはなっていないように思う。あえてベストを選ぶとすれば、
「最初に誰だってそれを疑うんじゃないの?」という不満はあるものの、津
島誠司的展開をものにした、「奇想の復活」所収の「殺人喜劇の鳥人伝説」
になるだろうか。本格としては手堅く、趣向も悪くないが、採点は6点

  

6/3 恐怖の誕生パーティー ウィリアム・カッツ 新潮文庫
 
 長い間、興味は強く抱いていたものの、読み逃していたカッツに初挑戦で
ある。ラストの意外性が特に衝撃的であるとの評判を聞いていたので、図書
館の「勝手にお持ちください」のコーナーに置いてあったのを幸い、読んで
みることにした。                         

 しかし、期待していたほどのサプライズ・エンディング・ストーリーとい
うほどのものではなく、良く出来たサスペンスであった。ラストの衝撃とし
ては、メインの流れに密接に関連したものとは言い難く、ちょっと取って付
けたような気がしてしまった。それなりの伏線があったのだろうか、と思い
返してみても、あまりピンとくるものはなかった。本格愛好家(?)の立場
から言えば、最後にこれを持ってくるなら、比較的敏感な読者であれば、出
た瞬間に「ああ、そう言えば」と、はたと膝を打つ納得のいく状況を盛り込
んでおきたいところである。単に驚かすだけではなく、なるほどと頷けてこ
そ、サプライズの効果は高い。私が鈍感なだけで見落としたのかもしれない
が、そういう意味ですっきりとすることは出来なかった。       

 サスペンスとしては、良く出来ていると思う。ぐぐぐっと盛り上げておい
て、ふっと抜く。そこから更に落としていくというサスペンスの常套手段も
うまく生かされている。「意外な真相があるはずだから、こいつは彼に思わ
れるように描かれているが、実は、、、」というような深読みをせずに読ん
でいたら(苦笑)、もっと楽しめたかもしれないが、そういう作品ならきっ
と初めから読んでないだろうな。サプライズはそういう期待とは別方向だっ
たので、残念ながら採点は6点。                  

 ところで、こういうサプライズものとしては、やはりリチャード・ニーリ
ーを思い浮かべてしまう。中でも「それはあんまりだ!」という、驚かせさ
えすればそれでいいのかよ!ってな作品が「心引き裂かれて」であった。好
事家の間では、サプライズ・エンディングの代表とも言える彼だが、その中
でもとびっきりといえば、この作品だと私は思う。全般に極めて入手困難な
のだが、「驚ければ、それでいいんだ!」という要素がないわけではない人
は、一度体験しておきたいショッキングな作品だと断言しておこう。  

  

6/5 ローウェル城の密室 小森健太朗 ハルキ文庫
 
 私のような人間は、真っ先に読んでおくべき作品だと思うのだが、ついつ
い読み逃していた作品である。文庫化されたので、喜んで飛びついた。結構
意外げなところを拾って出版しているハルキ文庫からである。     

 まあ、小森健太朗だし、評判が評判だったし、あざといことをやってるん
だろうと思いきや、やはりそうであったか。             

 私は新本格擁護派なんだろうと自覚している。奇想やトンデモトリックを
愛するし、ミステリのコードに果敢に挑戦する意欲作には、かなり高い評価
を与えてしまう人間だと思う。一種のゲームとして、それら作者の送り出す
大胆極まる鬼手に対しては、賞賛の拍手を惜しまない。ミステリは、負けて
こそ面白いゲームなのである。大技で圧倒的にやられてしまう、あるいは名
手の連続で息付く暇もなく打ちのめされる、あるいは圧倒的優位に立ってた
つもりなのに、最後の最後の逆転の一着ですっかりひっくり返される、そう
いう「負けの醍醐味」の味わいが、ミステリの大いなる愉しみの一つなのだ
と思っている。                          

 長々と何を書いているんだ、と言われそうだが、そういうゲームだからこ
そ、暗黙のルールが存在している。古今東西そのルールを明文化しようとす
る試みは幾度も行われているが、時代特有の物や見当違いな物が入っている
という部分を除いても、やはり決定的な物はいまだに作られていない。たと
え、それが出来たにしても、そのルールを破って、なおかつ本格ミステリと
して見事に結実させてしまう、そういう人物や傑作が必ず出てくるのが、こ
の業界だからである。                       

 問題は、そのルールの破り方の味である。ミステリの基本的ルールに挑戦
する場合、あらかじめそれを宣言する、という手段がある。双子トリックを
使用すると宣言する西村京太郎の「殺しの双曲線」や、「私が探偵であり、
犯人であり、うんぬんかんぬん」というのが、それらの例であろう。また基
本的ルールとは異なるが、あらかじめローカルルールを設定する、という手
もある。そのローカルルールの拘束条件の下では、上記の基本的ルールを破
り、なおかつ完全な本格を産み出すことも可能となる。西澤保彦のSF新本
格や、山口雅也の「生ける屍の死」がその好例だろう。        

 本作の味が悪いのは、ローカルルールの宣言という形に見せておいて、そ
の拘束条件もミステリの基本的ルールも、いっしょくたに破ってしまった点
にある。擬三次元的二次元という世界設定を行うならば、それをルールとし
て本格を実現させることが十分可能だと思われるのに、それらを超越して、
あまつさえ築き上げたミステリ的設定を一気に無力化してしまうのが、あま
りにも筋が悪いのだ。                       

 それに応じるかのように、こういう話ならばファンタジーとしてユーモア
ミステリの範疇で実現させるのが筋だと思えるのに(辻真先の「アリスの国
の殺人」のように)、ひどく後味の悪い、意地の悪い解決になってしまって
いる。たとえこのトリックであっても、別の人物を配するなどして、嫌味さ
を排除して、爽やかな作品にすら仕立てることは可能なはず。     

 奇想としては「負けの醍醐味」と別次元の物に仕上がってるとして、批判
的な意味合いをこめて、採点は5点。                

  

6/8 小説たけまる増刊号 我孫子武丸 集英社
 
 ナイス・アイデア!!!昨年度の企画賞を差し上げましょう。本屋で見て
笑ってしまった。ひとり雑誌をここまで凝れば、痛快爽快ものなので、中身
を見ずとも、7点進呈。こんな雑誌、自分も作ってみたいなぁ。    

 、、、と、これで流してもいいのだが、せっかく本棚一掃在庫処分キャン
ペーン(ちょうど読みたい新刊が途切れたのだ)で、本棚の肥やしから復活
を遂げることが出来たので、一応感想など。             

 残念ながら本格と言っても良い作品は、「裏庭の死体」「バベルの塔の犯
罪」の2作だけであった。前者は私は気付かなかったが、解決としては弱い
ように思う。推理合戦的な流れであれば、早い時期に出てきそうな推理であ
る。個人的には意外に期待している作家だけに、もうひとふんばり欲しい。
「奇想の復活」所収の後者は、さすがにあの作品集の中では、見劣りすると
言わざるを得ない。いかにもシリーズ化狙いなラストだが、続編は書かれて
いるのだろうか?                         

 戦慄のホラー特集は、完全なアイデア倒れ。やりたかったことは面白いの
だが、意余って才足りず、というところだろう。「叙述トリック試論」も、
気持ちは分かるが、残念ながら浅い。もう少し網羅した内容が欲しいもので
ある。この試論の中に出てた、京大ミステリ研の「この人達はこんなことを
考えて生きているのか」と、うぶな我孫子をうならせたという、騙しのテク
ニックの数々は是非読んでみたいものだなぁ。            

 短編としてのベストは、「車中の出来事」にしておこう。「患者」や「夜
のヒッチハイカー」と同じように「KGBと思わせて、実はCIAで、と思
ったら、ほんとはMI6で、ところがその正体はIRAで(以下続く)」と
いったことをやりたかった(のかもしれない)作品達である。その中では、
この作品が一番利口で楽しかった。                 

 エッセイや対談は、、、まぁ、感想はいいでしょう(笑)      

  

6/10 甦る「幻影城」3 角川書店
 
 入手困難な旧作が核となった「幻影城」であったが、「匣の中の失楽」や
「朱の絶筆」等の長編連載や、新人賞を取った連城三紀彦、泡坂妻夫を初め
として、天藤真の「遠きに目ありて」等、新作短編としても面白いものを持
っていた。既刊の新人賞作品をまとめた第1巻、懐かしい探偵作家の新作を
まとめた第2巻に続いて、今度は現代作家の新作をまとめた第3巻である。
現代作家と言っても、「当時の」という形容詞が必要であろう。個人的には
「幻影城」はリアルタイムには読んでいないとは云え、そんなに古い雑誌と
いうイメージはないのだが、ここに掲載されているほとんどの作家が既に故
人となっているのは、少々感慨深いものがある。           

 さて、内容的には、本格物もその他の犯罪物も、そこそこの面白さを持っ
ている。奇想や奇譚に満ちあふれていた時代を過ぎ、本格も変格も角の取れ
た無難な作品に覆われていたような時代のような気がするのだが、さすがに
「幻影城」というとんがった媒体から産まれただけあって、比較的強い印象
を与える作品にはなっているように思う。しかし新作は、やはり黄金時代の
旧作の再録には及ばず、採点は6点。                

 個人的なベスト3は、1位:「多すぎる証人」天藤真、2位:「最も高級
なゲーム」仁木悦子、3位:「密室のレクイエム」筑波孔一郎。やはり本格
物に偏ってしまう。日本の誇る名短編集の一つ「遠きに目ありて」よりの1
位は、ユーモアと叙情性を兼ね備えた名品。ユーモアと本格性が密接に融合
する、推理の着眼点がはっとする面白さ。仁木悦子はお得意の「素直」な本
格。優しい視点がいい。筑波孔一郎はひねった本格短編を書いていたが、残
念ながら大成しなかった。新本格時代に登場していたら面白いものを残した
可能性はあるように思うのだが。                  

  

6/11 「怪」第零号 水木・京極・荒俣他 角川書店
 
 水木しげるを会長に、荒俣宏や京極夏彦らが立ち上げた「世界(笑)妖怪
協会」の機関誌なんだそうである。順調に巻を重ねているようだが、いつま
で続くのであろうか?おそらく、京極の短編が読める、というのが部数を支
えている、ほぼ唯一の要件なんじゃないだろうかと邪推してしまうのだが。
世の妖怪ブームとやらは、こういう雑誌?を何号まで許容するのだろうか?
意地悪な見方かもしれないが、ちょっと楽しみでもある。       

 さて、愛読者カードでも面白かった記事ベスト3を挙げろ、と書いてある
ので選んでみたが、1位:小豆洗い(京極夏彦)、2位:神秘家列伝(水木
しげる)、3位:画図百鬼夜行の妖怪(多田克己)の順になった。   

 京極短編としては、手が込んでいる割に、結果が期待できないという、現
実的に考えるとかなりの疑問はあるのだが、物語的虚構としては良しか。2
位は水木しげるの筆よりは、描かれている人物そのものが興味深かった。誇
張の薄いテクストで読んでみたい気がする。3位は名前の由来などにこだわ
ってるのが、ミステリファンとしては読み物として面白い。荒俣宏は伝奇小
説の中で描く分にはいいが、こういう形にすると根拠のない思い込みの域を
脱することは出来ず、いまいち。毎号30万円の奨励金を水木しげる個人で
出す(太っ腹!)という、その第一回の作品は、単に話の収集に過ぎず、学
術論文的な突っ込みはなく、さりとて語りの面白みがあるわけでもなく、中
途半端なもの。未開地のフィールドワークご苦労様、ということか。しかし
初回がこれでは、今後の期待も薄い。全体的にも面白み薄い6点。   

  

6/18 女囮捜査官・視覚 山田正紀 幻冬舎文庫
 
 このところ立て続けに、ミステリの分野で大作、意欲作を発表している山
田正紀だが、ミステリに大きく傾いて来たのは、この連作からであったろう
か。発表当時は、いかにも勝目梓のような官能小説的題名で(「覚」ではな
く「姦」だったし)、刺激的な表紙にもなっていた為、良識的社会人の私と
しては(そうなのだ、おそらく)、買うのがためらわれて、興味は強くあっ
たものの(ミステリとしてね(笑))読み逃していたシリーズである。 

 シリーズとしては2作目に当たる本作を読んだ限りでは、全体を貫くとい
う「被害者学」というアイデアや女囚捜査官というアイデアの面白みは伝わ
らなかったが、我孫子の解説にあるように、不可能犯罪好きの人間をうなら
せるトリックが確かにあった。冷酷な計算に裏打ちされたトリックでないの
が残念だが、そうも出来たはずの見事なものだと思う。狂気が産み出した偶
然でなく、歪んだ理性の必然としても描けたものを、惜しげもなくサブに使
用したというところだろうか。我孫子と同じく私も「もったいないおばけ」
が出てきそうな気がしてしまったじゃないか。            

 そういうもったいなさを云えば、章タイトルでネタをばらしてしまうのも
ちょっと問題あるような気もする。その系統だと想像つくにせよ、「首都高
○○」ってモロ書いちゃうのもそうだし、犯人を指し示すとも言ってよさそ
うなタイトルもあったりして、老婆心ながら気になってしまった。   

 気持ち悪い話で、真犯人の隠匿手段もちょっと気になる癖に、簡単に想像
ついてしまうという不満もあるものの、やはりトリックの意外な斬新性を買
って、採点は7点。山田正紀、もはやミステリ界にも欠かせない人物になっ
ていると言えるだろう。                      

  

6/21 コミカル・ミステリー・ツアー3 いしいひさいち
                         創元推理文庫
 
 つい最近「2」を読んだばかりなので、どうしても比べてしまうのだが、
今回は前2作に比べて、随分と差が付いているような気がしてしまった。例
によってベスト数作を選ぼうと思ったのだが、残念ながら候補が出てこなか
ったくらいだ。とりあえず、以下の5作を選んでみた(順不同)    

「富豪刑事」鉄壁のアリバイ(いいたい気持ちはわかるぞ、貧乏犯人さん)
五つの腹時計       (元ネタも名作だが、アレンジも楽しかった)
居すわりの名画      (ネタフリとオチの噛み合いは今回のベスト)
空中ブラリン庭園の殺人  (歴史から消失しても構わないかも、小森君)
狂極の夏 第2作・魍魎の匣(自己パロディに、苦笑させられてしまった)

 しかし、こういう作品が掲載誌が6誌もあったのには、少し驚いた。清興
建設の「おりがみ」とやらが、なんだか意味不明だけれど。      

 今回はちょっと出来に満足できなかったので、採点は6点。     

  

6/25 ローズマリーの息子 アイラ・レヴィン 早川書房
  
 『1999年、ローズマリーが生んだ「悪魔の子」は、世界的新興宗教の教祖
となっていた。モダンホラーの金字塔とも呼ぶべき前作「ローズマリーの赤
ちゃん」は、本作の単なる序章にすぎなかった。黙示録的な恐怖に満ちた天
才作家完全復活の力作』という売り文句だったのだが、天才作家完全とち狂
いの脱力作と言った方が近いかもしれない。             

 ラストを読んで、読者は驚愕するであろう。しかしそれは、天才がほんと
に天才振りを発揮した「死の接吻」や映画「デス・トラップ」のような驚愕
とは、180度反転した性質のものなのである。「そりゃないぜ、ベイビー
(死語)」で「しおしおのぱー(最近復活?)」な気分にさせられてしまっ
た。前作「ローズマリーの赤ちゃん」はモダンホラーの秀作であった。そし
てそれを上回る「ブラジルから来た少年」も、形式的にはモダン・ホラーに
数えることも可能だろう。そして今回、モダンホラーを描こうとしているよ
うに見せかけて、最終的に冗談小説を読者に提出してしまったのだ。  

 ひょっとしたら、読者の予想を裏切ることを徹底的に追及した挙げ句の所
業と考えるべきかもしれない。本書では、レヴィンは二つの誘導で、おそら
く読者の想像を引っ張っている。それをひっくり返してみせた上で、更にそ
れらを構造ごと、がらんと徹底的にひっくり返して見せたのだろう。それが
意図なんじゃないかと思うものの、それでも納得いき難い悔しさが残る。

詳しくは「ローズマリーの息子」ネタバレ検討へどうぞ。

 ラストに関する話に終始してしまったが、やはりモダンホラーにしては、
怖さが全く感じられないし、悪魔も小人物に思えて、迫力は全くない。続編
は概ね出来は良くないものであるが、続編だけでは飽きたらず、1作目まで
をも台無しにしてしまうというのは、罪が倍増。採点は5点。     

  

6/28 黒死蝶殺人事件 金成陽三郎/さとうふみや 講談社
 
 金田一君である。しかも新しい話ではない。コミックスでは、22〜23
巻にあたる。TVアニメ版の金田一で、この話の解決編だけを見逃してしま
った妻が、古本屋で購入してきたので(気持ちはわかるぞ−>妻)読んでみ
た作品である。                          

 まぁ、相変わらずの出来と言えるだろうか。全部はわからないが、犯人や
その他幾つかは読める、といった類の出来映えである。私が過去に読んだ作
品のパクリはなかったようだが、盛り込みとしては薄い作品だろう。  

 今回のハウダニットは一つであるが、それに関しては複数の伏線が用意さ
れている。ちょっとうさんくさいものはあるが、効果という点ではまあまあ
と言ってよいだろうか。                      

 犯人に関しては、手掛かりとなるあの品が出た時点でわかってしまった。
出し方は結構露骨なので、わかる人が多い作品だろう。動機の裏に隠された
意外性もあるが、全体的にはやはり盛り込み不足で、金田一君の中でも、面
白みは少ない部類に入るかもしれない。               

 しかし、やはり漫画としては頑張ってると思うので、採点は6点。このく
らいのレベルとはいっても、週刊誌連載でこのペースで続けられるのは、非
常に立派なことである。どれだけのブレインがついているのか知らないが、
是非継続して欲しいものだと私は思っている。但し、異人館村に代表される
ような、あまりにもモロだろう!というパクリは、やめて欲しいけどね。

  

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