ホーム創作日記

 

04/02 転校クラブ 水生大海 原書房

 
 一見、爽やかな青春ミステリ。装丁も主人公のキャラクタも。でも、そう
感じたときからあなたはもう、罠に捉えられているのかもしれない。  

 ファンタジーっぽさを絡めた青春ミステリで、その実真相には毒っ気ぽさ
もあってって、この感じはまるで講談社ミステリーランドのよう。故宇山氏
が好みそうな作品のような気がするよ。               

 なんで、見かけはこんなんだけど、厭ミス系の味わいが好きってお方に向
いてる作品かもしれない。甘々な自分には少々不向きだったかなぁ。  

 作者はどういう方向を目指しているのかなぁ。イメージチェンジ路線とし
ては、成功の方向ではなかったように思う。というわけで採点は6点。 

  

04/03 Q.E.D.41巻 加藤元浩 講談社

 
 CMBとの自己コラボである「バルキアの特使」は、国際司法裁判所に関
する情報ネタにすぎなかったな。                  

 いつもながら短編漫画という非常に限られた枠の中で、簡潔に情報が整理
されて、門外漢の読者にもわかったような気持にさせてくれるのは上手い。
ただまぁその分、ミステリ色は薄すぎる。              

 一方「カフの追憶」は思いもかけないやり口が効果を発する佳作。  

 現代ミステリが主軸にしている(と私が考えている)ホワットダニットを
漫画ならではの見せ方で形にしたもの。               

「ユージュアル・サスペクツ」もそうなんだけど、こういう映像としてのア
ンフェア性をどう評価するかってのは、議論のテーマとしてわりかし面白い
んじゃないかと思うな。                      

 この映像を元に犯人当てとかいうような、そもそも厳密さが要求されるも
のでなければ、個人的にはあまり気にならない。でも「地の文では嘘を書か
ない」というような文章での暗黙のルールと、同じように厳密に捉える人も
当然いるだろうなとも思う。                    

 本格好き同士で、こういう映像のフェア性・アンフェア性を一度論じてみ
たいものだな。それはさておき、本巻の採点はいつもの6点。     

  

04/04 はやく名探偵になりたい 東川篤哉 光文社

 
 お馴染み迷探偵師弟による短編集。迷という割にはちゃんと名してるよう
な気もするけどね。凄さは無いけれど、ミステリとしては水準以上の出来を
示していて、パロディっぽさも兼ね備えていて、結構楽しめる作品かと。

「藤枝邸の完全なる密室」は、もっともパロディ色が強い作品。皮肉な結末
のアンチミステリ系のノリが楽しい。                

「時速四十キロの密室」は、偶然にもほどがあるって話ではあるが、とんで
もないところに繋がってしまう力業の無茶っぷりが楽しい。      

「七つのビールケースの問題」が、個人的には今回のベスト。ユーモアの中
にきっちりと折り畳まれている論理ミステリの解き味が楽しい。    

「雀の森の異常な夜」が今回の第二位。これもミステリ的に非常に凝ったシ
チュエーションで、ブラック・ユーモアの中にも上手さを感じさせる作品。

「宝石泥棒と母の悲しみ」を一応第三位に。設定がユニークなんで、本書中
でも一番一般受けしそう。マニアックな作品が多い中では光っている。 

 ブームが続いてるうちにと慌てて出した感のある本書だが、その割には結
構ミステリとして粒ぞろいであるので、採点は7点としよう。     

  

04/05 ぶたぶたは見た 矢崎存美 光文社文庫

 
 おお、こりゃミステリだぞと、ちらっと期待はしたのだけれど、真相はひ
どいな。きっと”いい話”になるんだな、この爺さんに共感しちゃうんだろ
うなと思ってたのに、結局ただの耄碌じじいの大暴走やん。げんなり。 

 この作品を”いい話”として完結させられなかったら、それは作者として
”負け”なのでは?!                       

 というわけで、残念ながらこれは失敗作だというのが、私の解釈。シリー
ズ中でも、最下位に近い作品だと思う。               

 やはりぶたぶたは短編(もしくは、せめて連作)に限るなぁ。    

  

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