ホーム創作日記

7/1 天狗岬殺人事件 山田風太郎 出版芸術社

 
 何故だか今に至るまで一般書店で見かけたことがない。充分購入に値する
本だったのだが、注文まではと思っているうちに、図書館で見つけて読む羽
目になってしまった。てな個人的事情はともかくとして、やはり未刊行の短
編だけで、これだけの質の作品集が編めるのは凄い。本格、ナンセンス、サ
スペンスと、いずれもそのエンタテインメント性を楽しめる作品ばかり。

 恒例のベスト3を選ぶならば、表題作と「白い夜」と「女探偵捕物帖シリ
ーズ」の3作としよう。物理トリックを心理の面から読みとっていく、表題
作の絶妙な構成。本格とサスペンスの見事な融合「白い夜」 仇討ちの相手
が次々と自滅していくという連作の妙味と、個々の凄まじい程の本格的トリ
ック、これは完結した形で読みたかった「女探偵捕物帖」       

 これ以外でも、珍しいミステリ・パロディ「二つの密室」、風太郎の一つ
の側面、艶笑ナンセンスが楽しい「こりゃ変羅」、タイムスリップ物「江戸
にいる私」も相変わらず良く作り込まれているもんだ。        

 採点は勿論の7点。目立たないけど(本屋さん、もっと扱ってください)
質の高いミステリを出版してくれる出版芸術社様。どうか今後ともよろしく
お願いします。次回は本屋で見かけなかったら、ネット書店使用します。

  

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